山あいの道に並んで立つ、オレンジのベストを着た講師2人

開催レポート岐阜県郡上市2026年10月3日・4日

鳥獣被害対策の現場を
体験する2日間

郡上市フィールドワーク開催レポート

自分たちで設置したカメラに、シカが映っている。翌朝、映像を確認した参加者の皆さんから拍手が起こりました。前日に足跡や獣道を探し、動物の動きを想像しながら選んだ場所。その予想を、実際のシカの姿で確かめられた瞬間です。

郡上市で開催した2日間のフィールドワークには、さまざまな仕事や関心を持つ方が参加しました。罠やカメラの設置体験、シカの解体見学、サルの追い払い。現場で活動する人たちと話しながら、鳥獣被害対策と自分との接点を考えた2日間を紹介します。

さまざまな仕事や関心を持つ方が岐阜・郡上へ

参加のきっかけは、一人ひとり異なります。最近郡上に移住してきた方、獣医の仕事と鳥獣被害対策との関わりを知りたい方、IT関係の仕事をしながら狩猟免許の取得を考えている方。動物の皮を使ったネクタイを制作・販売した方や、ジビエのおいしさを周りに広めたいという方もいました。

自己紹介では、ほかの参加者の話に「へえ!」「おお!」と声が上がり、早くも交流が始まっていました。同じ鳥獣被害対策に関心を持っていても、その入り口はさまざまです。

会場となった木造の校舎
スクリーンの前で自己紹介をする参加者
教室で話をする参加者
スクリーンを使って説明する興膳さん

1日目の前半は、興膳さんから、郡上の鳥獣被害の現状や対策、地域の方々との関わりについてお話を伺いました。参加者はそれぞれの仕事や関心に結びつけながら、積極的に質問。ほかの人の問いから、自分では気づかなかった視点に触れられるのも、多様な参加者が集まる場ならではの面白さです。

校舎の前に立つ興膳 健太さん
講師の興膳 健太さん(郡上里山株式会社)

獣道を探して罠とカメラの設置を体験

続いて体験したのは、くくり罠と、野生動物を撮影するトレイルカメラの設置です。2人一組になり、獣道や足跡を探しながら、動物がどこを通りそうかを考えて設置場所を選びました。

山あいの道を歩いて現場へ向かう参加者
罠の扱い方を説明する興膳さんと講師
草地の溝に沿って歩く参加者
林の中で罠を設置する参加者
2人一組で罠を手に取る参加者
木の根元でカメラの位置を確かめる参加者
杉林の斜面でカメラを取り付ける2人

足跡や獣道は、動物の動きを考える手がかりになります。カメラを置く場所を自分たちで決めるために、目の前の痕跡を確かめていきます。くくり罠は作動したときの感触も確かめ、体験後に回収。トレイルカメラは翌朝まで設置しておきました。

翌朝、1台のカメラに映っていたのが、冒頭で紹介したシカの姿です。自分たちで考えて設置した成果を、参加者の皆さんと一緒に喜びました。設置場所の検討から翌朝の確認までを通じて、動物の行動を、痕跡と映像から確かめる体験になりました。

スクリーンに映したトレイルカメラの映像を見る参加者

解体の現場で知る担い手の技術と経験

地域の解体処理施設では、見学の前日に捕獲されたシカの解体を見せていただきました。担当してくださった方は、4年間でおよそ1,500頭を解体してきたといいます。

解体処理施設の前に集まる参加者
シカを解体する担当の方
解体の様子を見学する参加者
吊るしたシカを解体しながら説明する様子
部位ごとに分けられたシカ肉

「ここまで切ると、あとは手で外せます」「この関節を切ると、少しの力で分けられます」。体の構造や作業の要点を説明しながら、手際よく解体が進んでいきます。その滑らかな動きから、積み重ねてきた経験と技術が伝わってきました。

また、市街地で猟師として活動する早川さんのお話も伺いました。郡上とは異なる環境での活動を知り、地域によって課題や関わり方が変わることを学びました。

2日間を通して伺ったのは、捕獲や解体の技術に加え、地域の方とどう関係を築くか、どんな思いで地域イベントを企画しているかという話です。現場を担う人の仕事や考え方に触れることで、鳥獣被害対策を地域の暮らしと結びつけて考える時間にもなりました。

ジビエを囲んで講師や参加者と語り合う

夜の懇親会では、シカ肉のシチューなどのジビエ料理をいただきながら、参加者と講師の皆さんが意見を交わしました。講義中には聞けなかったことも、食卓を囲むと気軽に話せます。

鍋で煮込まれたシカ肉のシチュー
料理を取り分ける参加者
シチューを味わう参加者
料理を手に談笑する講師と参加者

現地で気になったことを講師に聞いたり、参加者同士でそれぞれの関心について話したり。おいしいジビエを楽しみながら、会話が続く和やかな時間になりました。

普段の仕事や暮らしでは出会う機会の少ない人とも、共通の関心を入り口に話ができる。講師や参加者とのこうした交流も、フィールドワークの楽しみの一つです。

サルの追い払いから学ぶ継続的な対策の大切さ

2日目は、サルの追い払いを体験しました。まず、サルの位置を確認できるアプリについて教えていただき、追い払いの前後で動きを比べられるように準備します。

スマートフォンでサルの位置を確かめる参加者
追い払いの現場に集まった参加者
ロケット花火を上げる興膳さん
山に向けてロケット花火を上げる参加者
ロケット花火を手に山を見上げる参加者

現地では、興膳さんの指導のもと、ロケット花火を使った追い払いに参加しました。最初の1発のあとにはサルの鳴き声が聞こえ、参加者の皆さんも順番に取り組みました。

数時間後には、サルが山の奥へ移動したことを確認できました。ただ、翌日にはまた戻ってきていたそうです。追い払うことで一時的に移動しても、そこで対策が完了するわけではありません。継続して取り組む必要があることを、実際の動きから学びました。

動物がその場でどう反応し、その後どこへ移動するのか。追い払いと位置の確認を通じて、対策の手応えと難しさの両方に触れる体験になりました。

自分の仕事や関心から鳥獣被害対策への一歩を

終了後には、参加者同士で連絡先を交換する姿も見られました。アンケートでは「今後、鳥獣被害対策に関わっていきたい」「関連する情報がほしい」という声も寄せられ、現場での体験や出会いが、次の行動を考えるきっかけになっていました。

鳥獣被害対策には、捕獲に加え、ジビエの活用や情報発信、地域の人とのつながりづくりなど、さまざまな関わり方があります。今回集まった皆さんのように、今の仕事や身近な興味からつながる道もあります。

狩猟やジビエに興味がある。地域のために何かできることを考えたい。まずは、現場で何が行われているのか見てみたい。そうした関心があれば、フィールドワークを通して、現地で活動する人たちに話を聞いてみませんか。

動物の痕跡を探した経験や、担い手との会話が、自分なりの関わり方を考える手がかりになるかもしれません。今後のフィールドワークで、皆さんとお会いできることを楽しみにしています。

田んぼの前に並んだ参加者と講師の集合写真

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